Obsidian vs Notion vs Evernote:知識創造ツール比較
デジタル化が加速する現代において、日々大量の情報に触れる私たちは、それらをいかに効率的に管理し、活用していくかが重要になっています。そこで大きな役割を果たすのが「ノートアプリ」です。単なるメモ帳を超え、アイデアの創出、知識の整理、タスク管理、そしてチームでの情報共有まで、その可能性は広がり続けています。
中でも特に人気の高いノートアプリとして、Obsidian、Notion、そしてEvernoteの名前を耳にする機会が多いのではないでしょうか。しかし、それぞれ特徴が大きく異なるため、「結局どれが自分に合っているの?」と悩んでしまう方も少なくないはずです。多くの機能がある一方で、それぞれに得意なこと、苦手なことも存在します。
この記事では、これら3つの主要ノートアプリを徹底比較!それぞれの思想、機能、メリット・デメリットなどを解説し、あなたが最適なツールを選ぶお手伝いをします。
注目ノートアプリ3選!それぞれの概要とユニークな特徴
まずは、今回比較する3つのノートアプリ、Obsidian、Notion、Evernoteがそれぞれどのようなツールなのか、基本的な特徴と、得意・不得意を整理してみましょう。
Obsidian: ローカルファーストな「第二の脳」

Obsidianは、比較的新しいながらも、特にエンジニアや研究者、ライターといった層から熱狂的な支持を集めているノートアプリです。
- 思想: Obsidianの根底にあるのは、「第二の脳 (Second Brain)」を構築するという考え方です。情報はローカルのMarkdownファイルとして保存され、ユーザーがデータを完全にコントロールできます。
- 主な特徴:
- Markdownベースでの軽快な記述
- ノート同士を双方向リンクで結びつけ、知識をネットワーク化
- グラフビューによるノート間の関連性の可視化
- 豊富なコミュニティプラグインとテーマによる高いカスタマイズ性
- オフライン環境での全機能利用
- メリット:
- テキストベースの深い思考、アイデアのコネクション発見
- Markdownによる高速な記述と編集、Gitなどでのバージョン管理
- オフラインでの完全な作業環境と、ユーザーによるデータ完全所有
- Zettelkasten(ツェッテルカステン)などの知識管理手法の実践
- 高度なカスタマイズによる自分だけの執筆・思考環境の構築
- デメリット:
- WYSIWYG(見たまま編集)ではないため、Markdownに慣れが必要
- リッチなビジュアルコンテンツの作成や、複雑な表計算のようなデータベース機能は限定的(プラグインで補完可能だがNotionほどではない)
- リアルタイムでの複数人同時編集には不向き
- 初期設定やプラグインの選定・導入に学習コストがかかる場合がある
Notion: オールインワンのワークスペース

Notionは、「オールインワンワークスペース」を謳い、ドキュメント作成、タスク管理、プロジェクト管理、データベース構築など、あらゆる作業を一つのプラットフォームで完結できることを目指しています。
- 思想: ワークスペース内のあらゆる情報をブロックとして扱い、それらを自由に組み合わせることで、ユーザーのニーズに合わせた柔軟な情報管理を実現します。チームでの利用も強く意識されています。
- 主な特徴:
- ブロックベースの柔軟なエディタ
- 強力なデータベース機能(テーブル、リスト、カレンダー、カンバンなど多様なビュー)
- 豊富なテンプレートによる迅速なページ作成
- リアルタイム共同編集機能とコメント機能
- Webクリッパーによる情報収集
- メリット:
- タスク管理、プロジェクト管理、Wiki作成など、多様な情報を一元管理
- 視覚的で美しいドキュメントやデータベースの作成
- チームでのリアルタイムな情報共有と共同作業
- 豊富なテンプレートとカスタマイズ性による「自分だけのツール」構築
- API連携による外部サービスとの連携(自動化など)
- デメリット:
- オフラインでの利用が限定的(クラウドベースのため常時接続が望ましい)
- 多機能ゆえに、全ての機能を使いこなすには学習コストがかかる
- 動作が時々重くなることがある(特に大規模なデータベースや多数のブロックを持つページ)
- Obsidianのような純粋な双方向リンクやローカルでの完全なデータコントロールは不可
- 検索機能が大量のデータに対してやや弱いと感じる場合がある
特にモバイルアプリの検索機能はひどい
Evernote: 長年の実績を誇るデジタルファイリングキャビネット

Evernoteは、ノートアプリの草分け的存在として長年多くのユーザーに愛用されてきました。その信頼性と手軽さで、今もなお根強い人気を誇ります。
- 思想: 「すべてを記憶する (Remember Everything)」をスローガンに、あらゆる情報を手軽にキャプチャし、必要な時に素早くアクセスできるデジタルなファイリングキャビネットを目指しています。
- 主な特徴:
- テキスト、画像、音声、PDF、Webクリップ、手書き、スキャンなど多様なノート形式に対応
- 強力な検索機能(画像内文字やPDF内文字のOCR検索も含む)
- 主要なOS・デバイスに対応し、クラウドで同期
- 高機能なWebクリッパー
- ノート内タスク管理機能
- メリット:
- Webページ、書類、名刺、アイデアメモなど、あらゆる情報を手軽にキャプチャし一元化
- 直感的でシンプルな操作性、初心者でもすぐに使いこなせる
- 長年の実績による安定性と信頼性、豊富な情報量
- 強力な検索機能により、必要な情報を素早く見つけ出せる
- 多様なファイル形式の保存とプレビュー
- デメリット:
- 無料プランの機能制限が多い(同期台数、月間アップロード容量など ※最新プラン要確認)
- Obsidianのような高度なリンク機能や知識のネットワーク化は不得手
- Notionのような柔軟なデータベース構築や高度なレイアウトカスタマイズは不可
- 近年、機能追加やUI変更が頻繁で、古くからのユーザーには戸惑いも
- Markdownへの本格的な対応は限定的
利用シーン別!最適なノートアプリはこれだ!
これらの比較を踏まえて、どのような利用シーンにどのアプリが適しているのか、具体的に見ていきましょう。
こんなあなたにはObsidianがおすすめ!
- 深い思考、研究、Zettelkasten(ツェッテルカステン)を実践したい:
Obsidianの双方向リンクとグラフビューは、アイデア同士を結びつけ、新たな洞察を得るのに最適です。学術研究、論文執筆、複雑なテーマの分析など、深い思考を伴う作業に向いています。メリットは知識の関連性を可視化し、深掘りできる点です。デメリットとしては、この機能を最大限に活かすにはある程度の学習と試行錯誤が必要なことが挙げられます。[図/コード挿入箇所: Obsidianのグラフビューで知識がつながる様子を示すイメージ。複雑なネットワークが描かれているもの]
- Markdownでの執筆に慣れている、または習得したいエンジニアやライター:
Markdownによる軽快な執筆体験は、エンジニアのドキュメント作成やブログ執筆、技術メモなどに非常にマッチします。プレーンテキストであるため、Gitでのバージョン管理も容易です。メリットは執筆効率の高さと汎用性です。デメリットは、Markdown記法を知らない人にはとっつきにくい点です。 - オフラインでの利用が必須、データのプライバシーを最重視する:
ローカルファーストであるため、インターネット接続がない環境でも全ての機能を利用できます。また、データが自分の手元にある安心感は何物にも代えがたいでしょう。メリットは完全なデータコントロールとセキュリティです。デメリットは、クラウドベースのアプリのような手軽な自動同期のためには別途設定や有料サービスが必要な点です。


ノートごとにリンクを貼ったり、図式化したりもできます。
こんなあなたにはNotionがおすすめ!
- タスク管理、プロジェクト管理、ドキュメント作成を一つのツールで完結させたい:
Notionのデータベース機能と柔軟なページ構成は、カンバンボード、ガントチャート(プラグインや外部連携)、カレンダー、Wikiなど、あらゆる管理ツールを自作することを可能にします。メリットは多機能性と一元管理による効率化です。デメリットは、多機能ゆえにシンプルさを求める人には複雑に感じられることがある点です。[図/コード挿入箇所: Notionの多機能ダッシュボードやデータベース(カンバン、テーブル等)のスクリーンショット。複数の情報が一元管理されている様子]
- チームでの情報共有や共同作業をスムーズに行いたい:
リアルタイム共同編集やコメント機能は、チームプロジェクトの推進に不可欠です。部門ごとのWiki、共有タスクリスト、議事録など、チームのハブとして機能します。メリットはコラボレーションの円滑化です。デメリットは、個人利用がメインの場合、チーム機能が過剰に感じられるかもしれません。 - 多機能で柔軟なカスタマイズ性を活かし、自分だけのワークスペースを構築したい:
豊富なテンプレートを元に、自分やチームのワークフローに合わせて細かくカスタマイズできます。「こんなことができたらいいな」を実現できるポテンシャルを秘めています。メリットは圧倒的な自由度です。デメリットは、構築に時間がかかったり、何から手をつけていいか迷ったりする可能性がある点です。

私は個人で使っていたのでチーム運用はしていませんが、カンバンツールはTrelloライクで使っていました。
こんなあなたにはEvernoteがおすすめ!
- とにかく手軽に、あらゆる情報を一箇所に集めたい(Webクリップ、書類スキャン、音声メモなど):
Evernoteの強力なクリッピング機能や多様な入力方法は、思いついたアイデア、気になった記事、会議のメモ、名刺、レシートなどを素早く保存するのに便利です。メリットは情報収集の手軽さと多様性です。デメリットは、集めた情報を構造化して活用する機能がObsidianやNotionに比べて弱い点です。[図/コード挿入箇所: EvernoteのWebクリッパーや書類スキャン機能が動作している画面。手軽に情報を取り込んでいる様子]
- シンプルで直感的な操作性を重視し、多機能すぎるのは避けたい:
長年培われてきたUIは比較的シンプルで、多くの人にとって馴染みやすいでしょう。複雑な設定なしにすぐに使い始めたい場合に適しています。メリットは学習コストの低さです。デメリットは、より高度な機能やカスタマイズ性を求めるユーザーには物足りない可能性がある点です。 - 長年の実績と安定性を信頼し、安心して使い続けたい:
老舗ならではの安定感と、多くのユーザーがいることによる情報の豊富さは魅力です。基本的なノートテイキング機能で十分という方には、依然として有力な選択肢です。メリットは信頼性と実績です。デメリットは、近年無料プランの制限が厳しくなり、有料プランの価格設定に不満を持つユーザーもいる点です。
私のツール変遷
私はEvernote→Notion→Obsidianと乗り換えてきました。
Evernoteは10年ほど使っていました。機能としては今から見ればシンプルで使いやすかったとは思いますが、上で記載している通り、近年の無料アカウントへの制限の厳しさ、有料アカウントに対しても年々値上げしている上、他のツールでも代用できるようになってきていたためです。一番重宝していたのはPDFでも何でもかんでもつっこんでおいて検索できることだったかなと。
次にNotionの無料版を使い始めたのですが、こちらはPCで使う分にはさほど不満はありませんでしたが、モバイルアプリに不満を持つようになりました。Notionのモバイルアプリの欠点はページ内検索機能だと思っています。キーワードをもとに載っているノートは探せるものの、開くとトップに遷移するだけなので、そのノートのどこに書いてあるかは自力で探す必要があります。これだけで私が使い続ける気力がなくなったといっても過言ではありません。EvernoteやObsidianではちゃんと記述されているところまでジャンプできます。
次にObsidianを使い始めましたが、こちらはまだ使い始めて日が浅いので何とも言えませんが、Notionほど機能モリモリではなくても、プラグインが豊富なので必要に応じて追加していけば思考ツールとしてはかなりいろんなことができます。ローカル環境想定の作りとはいえ、クラウドストレージに置いておけばマルチデバイスでも使えます。
乗り換えを検討中のあなたへ:スムーズな移行のために
現在いずれかのノートアプリを利用していて、他のアプリへの乗り換えを考えている方もいるかもしれません。
- データのエクスポート・インポート:
- Obsidian: Markdownファイルなので、基本的には他のMarkdown対応アプリへの移行は比較的容易です。Obsidian独自のリンク形式などは注意が必要です。
- Notion: MarkdownやCSV形式でのエクスポートが可能です。Evernoteからのインポート機能も提供されています。
- Evernote: ENEX形式 (Evernote独自のXMLベースの形式) でのエクスポートが可能です。多くのアプリがこの形式のインポートに対応しています。Markdownへの変換ツールなども存在します。
- 移行時の注意点:
- フォーマットの互換性: 完璧な移行は難しい場合が多く、レイアウトの崩れや一部情報の欠落が発生する可能性があります。
- 独自機能の再現性: 例えば、ObsidianのグラフビューやNotionの高度なデータベース機能は、他のアプリでは完全には再現できない場合があります。
- 移行にかかる時間と手間: ノートの量が多いほど、移行には時間と手間がかかります。事前にテスト移行を行うことをお勧めします。
- サードパーティ製の移行ツール: 特定のアプリ間の移行を支援するツールやスクリプトが存在する場合もあります。GitHubなどで探してみるのも良いでしょう。
焦らず、まずは一部のデータで試してみて、自分にとって最適な移行方法を見つけることが大切です。
まとめ:あなたにとって最高の「知識創造ツール」を見つけよう!
Obsidian、Notion、Evernoteは、それぞれ異なる思想と強み、そして得意なこと・苦手なことを持つ優れたノートアプリです。
- Obsidian: ローカル環境で知識を深く掘り下げ、ネットワーク化したいあなたへ。Markdownでの高速な記述と完全なデータコントロールがメリットですが、リッチなビジュアル表現やチームコラボレーションは苦手です。
- Notion: あらゆる情報を一元化し、柔軟なワークスペースを構築したいあなたへ。多機能性とチームでの共同作業がメリットですが、オフライン利用の制限や動作の重さが気になることも。
- Evernote: 手軽にあらゆる情報をキャプチャし、シンプルに管理したいあなたへ。情報収集の手軽さと強力な検索がメリットですが、無料版の制限が多く、高度な構造化は苦手です。
完璧なノートアプリというものは存在せず日々進化しています。今後も新しい機能が追加されたり、新たな革新的なツールが登場したりすることでしょう。ぜひ、様々なツールを試してみて、あなたにとって最高の「知識創造ツール」を見つけてください。
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